マーケティングに有利?成長を続ける機能性表示食品の売上から将来性を考察

2015年にスタートしている機能性表示食品の制度ですが、近年の健康ブームも手伝って、順調に売り上げを伸ばす企業が増えているようです。

特保(特定保健用食品)よりも気軽に取得できるのが魅力なものの、消費者にとってイメージは良好なようで、世間に浸透していきました。この記事では、実際の売上を紹介しつつ、機能性表示食品について考察していきます。

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右肩上がりで成長している機能性表示食品

機能性表示食品は取得が簡単な分、近年は登録されている製品もラインナップを増やしており、それに伴って売上も右肩上がりで成長を続けてきました。厳格な審査が用意されていて苦戦することも多い特保と違い、届け出が受理されれば良いのが機能性表示食品の魅力で、手軽に取得できるメリットを活かし、ビジネスシーンでの活用が進んでいるのが理由と言われます。

現在ではまだ特保の方が売上は大きいのですが、その差は年々少なくなってきており、近い将来には逆転すると予測されています。それでは、具体的な機能性表示食品の売上の伸び幅を見てみましょう。2015年にスタートした当初の売上は、わずか300億円ほどです。

この時期に最盛期を迎えつつあった特保が4,000億円に迫る勢いで、その差は圧倒的なものでした。もしかしたら余り活用が進まないかとの予測もあったようですが、翌年にはその不安を覆し、年間の売上はほぼ3倍増を達成。

1,000億円規模のビッグマーケットに急成長を遂げたのです。このことで機能性表示食品は一気に企業にも消費者にも受け入れられ、健康ブームも手伝って急成長を続けることになります。2018年には2,000億円規模に到達しており、平均すると年間で500億円ずつ成長を続けている計算です。

以降も勢いは止まらず成長を続け、記事執筆時点では予測ではあるものの、2020年には3,000億円に到達するのはほぼ確実視されています。逆に特保の方は近年はほぼ横ばいで、若干ですがマイナス成長を始めつつあり、両者の差は縮んできました。

理由は特保の成長の原動力だった乳酸菌ブームが過ぎ去ったことがあげられており、対して取得のしやすさから多方面で活用が進む機能性表示食品が有利になりつつあると考えられています。

機能性表示食品の売上と届け出数の推移

右肩上がりで成長を続けてきた機能性表示食品ですが、気になるのは届け出数とのバランスです。届け出数が増える割合よりも、売り上げ伸び率の方が低いと、製品当たりの収益は低くなっていると考えられます。この点では、2020年の段階でデータを参照したところ、売上と届け出数の伸び率は、ほぼ同程度と言って良いでしょう。

両者をグラフにすると、ほぼ同じカーブを描いています。つまり、届け出数が増えるにしたがって、しっかりとマーケットが成長していると言えるはずです。実際のデータでは、2015年には300件に少し足りない程度でした。

2016年には900件少々で、2018年にはほぼ1,900件となっています。売上もこの時期には2年でほぼ倍に成長しているので、順調にマーケットが成長してきたことがうかがえます。ただ、問題としては届け出数が増えるにしたがって、撤回が見られるケースも多くなってきた点です。

今は極わずかなのですが届け出をした後に、研究が進んで期待された効果がなかったと実証されたようなケースで、企業が自主的に撤回することがあります。自社でこのような事態になりますと、消費者からの信頼を失いかねませんから、機能性表示食品の届け出をする時には確実性も重視したいものです。

なお、2020年までの累積届出数は、撤回された分を除いて実質、ほぼ3,000件となっています。今後も届け出数は増えると見込まれているため、参入は積極的に検討していきましょう。

どのようなカテゴリーの売上が伸びているのか

機能性表示食品は基本的に、サプリや健康食品の形で提供されているものが多いです。健康志向の高まりに対応しているためで、特に生活習慣病を予防したい方が利用するケースが多くなっています。具体的には、体脂肪に関係がある製品は、機能性表示食品の中では最も売上が大きなカテゴリーです。

お腹の脂肪や血中コレステロールを減少するような製品が、特に人気が高いと考えて良いでしょう。次に売上が大きいのが、関節に効果がある製品と、便秘の解消に役立つアイテムとなります。この二つのカテゴリーは、特保に対して機能性表示食品の方が圧倒的に支持を得ているのが特徴です。

今後も高齢化社会が進むので、関節関係は伸びしろが期待できるでしょう。他にも脂肪と糖のどちらにも効果がある製品や、血圧とコレステロールの両方に作用するアイテムが人気です。逆に、腸内環境関係は特保が圧倒的に有利となっています。

特保の売上の大部分を整腸作用がある製品や、乳酸菌サプリ類が占めているのが現状です。ただ、機能性表示食品もこの分野で一定の成果があるため、今後は更に伸びてくる可能性はあるでしょう。

機能性表示食品で売上が上昇している企業のタイプ

機能性表示食品で売り上げを伸ばしている企業は、代表的なものはサプリメーカーと製薬会社、そして食品会社の3つです。特にサプリメーカーは機能性表示食品との相性が極めて良く、参入しやすくなっています。製薬会社の方もノウハウと信頼性を活かして、サプリや健康食品を手掛けるようになってきました。

食品会社は健康食品の他、自社でサプリを開発するケースがあります。

今後の売上の予測

今後も機能性表示食品のマーケットは、しばらく拡大を続けると予測されています。もちろん、売上が鈍化する可能性はありますが、逆に新たなニーズを開拓できれば、更にマーケットが拡大する見込みもあるでしょう。特に高齢化対策におけるニーズは豊富と予測されているため、この分野をはじめ、表示が認められる機能・効果の拡充が期待されています。

なお、今後は特保と機能性表示食品の両方にテコ入れをし、両者の差別化が行われる可能性にも留意が必要です。現在は特保と機能性表示食品はイメージがかぶっており、製品ラインナップも似通ってきたため、政府は両者の使い分けを促進する考えがあると言われています。

機能性表示食品を上手に活用するためには

機能性表示食品は2020年の段階で特保に並ぶ市場規模へと成長を遂げており、今後の期待度も高めです。手続きは届け出だけと手軽ではありますが、うまくビジネスに取り入れるためには戦略的な検討が大切となります。

既存製品のリニューアルなのか、それとも機能性表示食品を新しく開発するのかなど、活用の仕方によって成果も変わってくるはず。まずはリサーチして情報を集め、自社に最適な計画を練っていきましょう。